当科の診療について
岡山大学病院形成外科の特色は,マイクロサージャリー技術を用いた種々の再建術,リンパ浮腫の治療を行っている事です.また,国立病院としては唯一性同一性障害の性別適合手術を行っております.
形成外科は体のあらゆる部分の手術を行います.そのため関連各科・各部門との協力は非常に重要です.現在までに,頭頸部再建センター,ジェンダーセンター,乳がん治療・再建センター,小児頭蓋顎顔面形成センター,口唇・口蓋裂総合治療センターの立ち上げに携わり,チーム医療の基礎的な体制を整えてきました.合同カンファレンスの開催等を通じて情報を共有し,治療方針について話し合いの場を設け,患者さんにとって最良の治療を提供できるよう努めています.
頭頸部再建
頭頸部再建とは、舌や歯茎、のどなどのがんを切除することによって生じる「食事や会話の障害」や「見た目の変形」を組織移植によって修復する分野です。がんを切除する耳鼻咽喉科をはじめ、治療に関係する様々な職種と密接に連携してチーム医療を進めております。
再建を必要とするような頭頸部がん手術の場合、手術後に食べる、話すなどの日常生活に不可欠な機能が一時的に低下します。この機能低下は手術後のリハビリテーションにより徐々に回復してまいりますが、手術前になるべく手術後の状態がイメージでき、円滑にリハビリテーションに移行できるように、具体的かつわかりやすい説明を行うようにしています。
また、放射線治療後に生じた上あごや下あごの組織壊死など、再建術を行うことで日常の生活の質の改善が見込まれる方に対する手術も積極的に行なっております。
詳細は以下のリンクを参照してください。
岡山大学病院頭頸部がんセンター(OHNCC)
http://www.okayama-u.ac.jp/user/ohnccpky/
性同一性障害(GID)
※ ※ 性別不合(GI)が正式採用されるまでは(GID)という呼称を採用します.
岡山大学病院では2000年から性同一性障害(GID)の手術治療を開始しました。2018年4月より乳房切除術を含む性別適合手術(SRS)に対して、長年の願いであった保険適用が認められました。しかしながらSRSを施術する前には原則、自費診療での性ホルモン治療を先行しているため、混合診療となり多くのSRSに保険が適用できない状況です。この状況を解決するために、性ホルモン治療の保険適用に向けて厚労省と検討を重ねています。
乳房切除術がもたらす精神的効果を確認するために、エビデンスレベルの高い5つのスケールを用いたアンケート調査を過去5年にわたって行いました。その結果、生活の質、鬱症状、性別違和のそれぞれにおいて精神的ストレスの改善が認められました。今後は同様のアンケート調査をSRSに関しても行っていく予定です。
これまで各種皮弁を用いた陰茎再建術、会陰・鼠径皮弁を用いた造腟術、腹腔鏡を併用した結腸造腟術など低侵襲かつ機能的に良好な手術法を導入してきました。今後は、顔面の女性化術などのような患者様の社会適応を良好にする手術を導入していく予定です。
詳細は以下のリンクを参照してください。
岡山大学ジェンダーセンター
http://www.okayamau.ac.jp/user/genderc1/
リンパ浮腫
リンパの流れが障害されて手足がむくむリンパ浮腫。一度発症すると完治することは難しく、放置すると徐々に悪化して皮膚が硬くなったり炎症を繰り返したりするようになります。
当科では各種画像診断を含むリンパ浮腫の正確な診断を行なった上で、医師、医療リンパドレナージセラピスト、看護師、理学療法士、作業療法士による専門チームでリンパ浮腫に対する保存的治療と外科的治療を組み合わせた積極的な治療を行なっています。特に外科的治療においては2000年の開設当初より800件以上の症例経験があります。
連携施設として光生病院リンパ浮腫治療センターを2008年に設立し、定期的に会議を開いて病院の枠を超えたチーム医療を行なっています。緩和期におけるケアも行なっております。
岡山大学病院 リンパ浮腫専門ケアチーム
https://www.okayama-u.ac.jp/user/hospital/index214.html
光生病院 リンパ浮腫治療センター
http://www.kousei-hp.or.jp/lymphedema/
乳房再建
2008年より岡山大学乳がん治療・再建センターを設立し、各科、各部署が一体となって患者さんの治療に当たっています。マイクロサージャリー技術を用いたDIEP皮弁などの自家組織移植や2013年より保険承認となった人工乳房(インプラント)による乳房再建の両方を行なっております。患者さん一人ひとりが最適な術式選択ができるよう術前の説明を尽くします。術後は患者さんのQOL(生活の質)を重視したケアを行なっており、再建術後の下着の相談やリンパ浮腫のケアに対応します。
人工乳房につきまして, 2019年7月のアラガン社テクスチャードタイプインプラントの自主回収以降,アラガン社のスムースタイプのエキスパンダー・インプラント、Sientra社のテクスチャードタイプのインプラント、Establishment Labs社のスムースシルクインプラントを用いて再建を行っています。
BIA-ALCL(ブレストインプラント関連未分化大細胞型リンパ腫)につきましては, 日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会のHPをご参照ください。http://jopbs.umin.jp/general/index.html
令和2年4月より、遺伝性乳がん卵巣がん症候群(Hereditary Breast and Ovarian Cancer Syndrome,HBOC)の既発症者に対するリスク低減乳房切除術と乳房再建術が保険収載となりました。遺伝学的検査、遺伝カウンセリングを受けた上で該当する場合は当院で施術可能です。
詳細は、以下のリンクを参照してください。
岡山大学病院 乳がん治療・再建センター https://www.bctr.co
小児先天性疾患
当科では、大学病院という利点を活かし、口唇裂・口蓋裂総合治療センターおよび小児頭蓋顔面形成センターのコアメンバーとして、関連各科と密に連携を取りながらチーム医療を行なっております。
対象疾患は、最も発生頻度の高い外表面の先天疾患である口唇裂・口蓋裂はもちろん、頭蓋骨早期湯合症などの頭蓋変形疾患、さらにアペール症候群、クルーゾン症候群などの非常にまれな症候性頭蓋顔面疾患に至ります。また、小耳症、先天性眼瞼下垂症などの治療にも力を入れております。
以下のリンクもご参照ください。
岡山大学病院 口唇裂・口蓋裂総合治療センター
http://www.okayama-u.ac.jp/user/ohaclcpc/
岡山大学病院 小児頭蓋顔面形成センター
血管腫・血管奇形
主に放射線科と協力して診療を行っています。
「いちご状血管腫(乳児血管腫)」、「単純血管腫(毛細血管奇形)」、「リンパ管奇形(リンパ管腫)」、「静脈奇形」、「動静脈奇形」などの、血管性腫瘍や血管奇形と呼称される疾患を取り扱います。基本的には良性とされる病変ですが、広い範囲・深い部位に存在すると、治療に難渋する場合もあります。
弾性ストッキングなどによる圧迫、いちご状血管腫に対するプロプラノロール(ヘマンジオルシロップⓇ)内服、静脈奇形やリンパ管奇形に対する漢方内服といった体への負担の少ない治療法から、薬剤を病変に注入する硬化療法、動静脈奇形に対する血管塞栓、各種病変に対する切除術、といった多くの選択肢から状況に応じて治療を行っていきます。
AVM:動静脈奇形
VM:静脈奇形
LM:リンパ管奇形
IH:いちご状血管腫
その他:症候性疾患を含む
その他,顔面神経麻痺,四肢や体幹の再建,顔面骨骨折,眼瞼下垂手術,熱傷の治療,瘢痕形成術,ケロイド治療など,形成外科領域の疾患を幅広く手がけております.