小児先天性疾患
当科では、大学病院という利点を活かし、口唇裂・口蓋裂総合治療センターおよび小児頭蓋顔面形成センターのコアメンバーとして、関連各科と密に連携を取りながら、成長・発達を見据えたチーム医療を行っています。
対象となる疾患は、外表面の先天異常として頻度の高い口唇裂・口蓋裂をはじめ、頭蓋骨早期癒合症などの頭蓋変形疾患、さらにアペール症候群やクルーゾン症候群などのまれな症候性頭蓋顔面疾患まで多岐にわたります。
また、小耳症をはじめとする耳介の先天異常についても、当科が特に力を入れている分野の一つです。耳介の形態や程度に応じて、成長を考慮しながら適切な時期と方法を検討し治療に臨んでいます。先天性眼瞼下垂症や外鼻変形など、顔面に生じるさまざまな先天異常にも幅広く対応しています。
さらに、小児形成外科が扱う疾患は顔面に限りません。多指症・合指症などの手足の先天異常をはじめ、体表に生じるさまざまな先天性疾患についても、機能面と整容面の双方に配慮しながら治療を行っています。
以下のリンクもご参照ください。
岡山大学病院 口唇裂・口蓋裂総合治療センター
http://www.okayama-u.ac.jp/user/ohaclcpc/
岡山大学病院 小児頭蓋顔面形成センター
https://www.okayama-u.ac.jp/user/hospital/index191.html
※掲載内容は更新時点の情報であり、現在の診療内容等と異なる場合があります。
あらかじめご了承ください。
〈扱う疾患の例〉
※症例写真はすべて当施設にて行われたものです
頭蓋縫合早期癒合症
頭蓋骨縫合早期癒合症とは, 頭の骨が成長する部分である頭蓋縫合(骨の継ぎ目)が通常より早く閉じてしまう疾患で, 頭の成長が抑制され, 頭蓋内の圧力が高まって脳の成長まで影響が及ぶことがあります.
また, 閉じて成長しなくなった部分と, 周囲との成長バランスが崩れ, 外見上も様々な頭の変形(舟状頭, 短頭, 斜頭, 三角頭など)を生じます.
脳の成長や発達を考えると早期発見が重要です.
治療では, 手術によって頭蓋内圧を下げ, さらに頭蓋の形もきれいに整えます.
【当院における頭蓋骨縫合早期癒合症の治療の特色】
当施設独自にCT画像を基にして得られた日本人小児の正常頭蓋形態を基準として、患者の頭蓋変形の状態を定量的に評価し、これに基づいた治療法の選択を行っています。

CT画像をもとに、正常な頭の真ん中の垂直ラインおよび最大の水平ラインそれぞれの輪郭線を明らかにしました。

これを患者さんの頭と比べることで、必要な頭の拡大方向と量が明確になります。
(図の場合では頭の後ろへの拡大が必要で、逆におでこ周りは過剰に出過ぎていることが分かります。)
手術法は、頭蓋骨の変形部分を一度外して直接形を整えて再固定する一期的頭蓋形成術や, 延長器で骨を少しずつ伸ばす頭蓋骨延長法などがあります。
また, 新たな術式としてMCDO法(Multidirectional Cranial Distraction Osteogenesis)を行っています.
MCDO法
MCDO法は変形した頭蓋骨をいくつかのブロックに分け, それぞれを多方向に骨延長させる画期的な方法です.変形の強い症例においても非常に安定した結果を残しております.
特に我々が用いている形態評価法(MSVA/HoVA)との親和性が高く、変形のかなりの部分を正常に近づけることが可能になりました。

MCDO法の利点は, 従来の骨延長法に比べより自然な形態を安定して得やすいこと, また骨延長であるために一期的頭蓋形成術に比べて骨形成や拡大量に優れることが挙げられます.
一報で、手技が煩雑になり、手術時間等の負担はやや大きくなる傾向にあります。また、一定期間、特殊なヘルメットが頭に固定されるため、転倒に気を付ける必要があるなど、いくつかの注意点があります。
口唇裂・口蓋裂
口唇裂, 口蓋裂は生まれつき, 上口唇や上顎, 口蓋が分離している疾患です.
胎生期の初め別々であった左右の口唇や顎, 口蓋が成長に伴いつながっていくのですが, この疾患では何らかの異常により, うまくくっつかなかったため生じます.
哺乳, 摂食や発音に影響が及ぶため, 生後から治療介入し, その後も成長に合わせた複数回の治療を行う必要があります.
当科では平成27年5月より開設された「岡山大学病院 口唇裂・口蓋裂総合治療センター」のコアメンバーとして, 矯正歯科, 口腔外科, 耳鼻咽喉科, 言語聴覚士と連携し, 総合的な口唇裂・口蓋裂治療を行っています.

術前 両側の不全口唇裂

手術デザイン

術後1年
耳介先天異常
耳介先天異常とは
耳介先天異常とは、生まれつき耳の大きさや形、位置などに異常がみられる疾患の総称です。耳の一部または全体の発育が不十分な「小耳症」をはじめ、「埋没耳」「耳輪癒着」「立ち耳」「絞扼耳(折れ耳)」など、さまざまな種類があります。
耳介の形態異常は、外見上の問題だけでなく、眼鏡やマスクの装着に支障をきたすことがあります。また、小耳症では外耳道の閉鎖や狭窄を伴い、聴力に影響する場合もあります。
当科では、小耳症の耳介再建術をはじめ、さまざまな耳介先天異常に対する治療を行っています。耳の形態や変形の程度、お子さまの成長に応じて、装具を用いた矯正治療から外科的治療まで、適切な治療方法をご提案しています。
① 小耳症
生まれつき耳介が小さいあるいは全くない状態です. 同時に外耳道(耳の穴)まで欠損することがあり聴力障害を生じることがあります(その場合も通常内耳はあるので多くの場合は伝音性難聴となります).
治療法
小耳症では標準的に大きく2回の手術を行います.
当施設では主に永田法、四ツ柳法を基本とした手術を行っております。
<手術法>
1回目(肋軟骨フレーム移植) 耳の形を作る手術
自身の肋軟骨から耳の形にフレームを作り,耳の場所に移植する手術です(肋軟骨移植術).これにより耳の表側の形を作ります.
耳甲介型小耳症など, 一部正常形態が残っている場合にはその部分を温存し, 足りない部分を補充するようなフレームを作ります.

2回目(耳介挙上術) 作った耳を起こす手術
1回目で作った耳の形は側頭部に張り付いた状態になっているので,
これを後ろ側から切開, 剥離して前へ起こします.
そのままでは、また倒れてしまいますので、肋軟骨(1回目の手術で余った軟骨を体に保存しておき利用します)で支えを入れ、さらに耳の裏面は筋膜と皮膚移植(下腹部や頭部から皮膚を取ります)で覆います。

補助的治療 皮膚の余分や、小さな変形を整える修正手術、脱毛レーザーなど
小耳症手術は皮膚の血流が重要なため、メインの2回の手術では、血流を妨げない為にあえて、皮膚の余分や変形が残ることが多いです。そういった一部の皮膚の変形を整える手術が後日行われます。
多くは日帰り局所麻酔での手術が可能です。
また、頭皮に一部がかかるため、耳から毛が生えることがあります。毛については、後日脱毛レーザー(自費治療)などが行われます。
<入院期間>
十町に経過した場合の入院期間は、
1回目の手術で約10日
2回目の手術で約2週間です
<合併症>
一般的な出血, 感染のほか, 軟骨フレームを覆う皮膚の血流不全に注意が必要です.
これらにより皮膚に穴があいて軟骨が露出してしまうと、軟骨が吸収され形が崩れてしまいます.
(最悪の場合、手術のやり直しになります)
術後注意深く観察し、早期発見と悪化防止が重要で、必要に応じて追加処置を行います。
また軟骨採取により、胸郭の変形が生じる場合があります。
<費用>
保険診療です.
<手術時期>(いつから、いつまで可能か)
10歳以上、胸囲60cm以上、身長140cm以上
上記が国内で伝統的に小耳症手術(1回目)が可能となる基準とされています。
一方で、作った耳の質(丈夫さや、造形の精度、大きさ)などについては、もう少し体が成長した12歳以降~20代がより条件としては良くなります。
また成人後は個人差があるものの次第に軟骨が硬くなって、造形が難しくなってきます。そのため、成人後の小耳症手術は可能ですが、造形面でやや不利になる場合があります。
② 埋没耳
耳の上3分の1程度が皮下に埋まり込んでいる状態です. 手で引っ張ると引き出すことができますが, 離すと元通りになってしまいます.
<矯正治療>
生後1才未満(特に新生児)であれば, 簡単な装具(プラスチックやシリコンチューブ, 金属クリップ等で作成した矯正具)を数週間装着して, 軟骨の癖を付けることで形を整えることができます.
写真の症例では、親御さんが直接手で曲げやすい、PVC被覆アルミ線を素材として使用しています。
<手術治療>
1歳を超えて、変形が残っている場合や、元々の軟骨の変形や皮膚の緊張が強い場合など, 矯正治療で治療効果が不十分であれば, 手術治療を行うことがあります。
<手術法>
埋没耳の手術では、主に耳の後ろ側の皮膚せ切開して行います。
耳を引き出すだけではなく、軟骨の変形度を複数同時に修正することができるため、矯正治療で十分に直せなかった変形に対しても有効です。
傷跡はほとんどが耳の裏に隠れます。
<入院期間>
入院は3-4日程度で、抜糸は術後10日前後で外来にて行います。
<合併症>
出血、血腫、感染などのほかに
軟骨や皮膚の癖が残ることで、後戻り変形を生じることがあります。
<手術時期>
4歳以上を基本として、小学校入学前など、希望に応じて行います。


③ 副耳
耳の周りにできる小さな突起物で, 比較的良く見られます. ときどき頬や頸に生じる時もあります.
機能的異常や障害はなく, 治療は見た目の改善目的となります.
皮下に軟骨の芯があるため, 手術にて切除します.

④ 先天性耳瘻孔
生まれつき耳の周りや中に, 細く小さな穴が出来る異常です.
穴は見た目以上に深く, 中に角質等がたまり場合によっては炎症を繰り返します.
穴があるだけでは治療を急ぐ必要はありませんが, 炎症を繰り返すような場合は手術で根治的に取り除きます.
先天性眼瞼下垂
生まれつき瞼を開く筋肉(上眼瞼挙筋)が欠損し働きが弱くなる異常です.
手術で治療しますが, ある程度筋肉の機能が残っている場合はその筋肉の効きを強める手術法を, 筋肉が全く働かない場合は, 太ももの筋膜を移植して, 眉毛の動きで瞼を上げる手術法を用います.
