血管腫・血管奇形
「いちご状血管腫(乳児血管腫)」、「単純血管腫(毛細血管奇形)」、「リンパ管奇形(リンパ管腫)」、「静脈奇形」、「動静脈奇形」などの、血管性腫瘍や血管奇形または脈管奇形と呼称される疾患を取り扱います。
基本的には良性とされる病変ですが、広い範囲・深い部位に存在すると、治療に難渋する場合もあります。
弾性ストッキングなどによる圧迫、静脈奇形やリンパ管奇形に対する漢方内服といった体への負担の少ない治療法から、薬剤を病変に注入する硬化療法、動静脈奇形に対する血管塞栓、各種病変に対する切除術、および切除後の障害に対する再建手術といった多くの選択肢から状況に応じて治療を行っていきます。
なお、表在病変に対するレーザー治療、乳児血管腫に対するプロプラノロール内服導入は大学施設ではなく市内関連施設等で行っています。
<扱う疾患の例>
静脈奇形
静脈奇形とは
静脈奇形は、生まれつき静脈の形成に異常が生じることで、正常とは異なる形の静脈が集まってできる病気です。かつては「海綿状血管腫」や「筋肉内血管腫」などと呼ばれていましたが、現在では「静脈奇形」という名称が用いられています。
体のさまざまな場所に発生しますが、特に顔面、口唇、舌、頸部、手足などにみられます。皮膚の浅い部分だけでなく、筋肉の中など深い場所に広がることもあります。
静脈奇形は生まれつき存在するものですが、出生時には目立たず、成長とともに徐々に増大したり、痛みが出たりして初めて気づかれることが多いです。また、思春期や妊娠など、ホルモンバランスの変化で増大することもあります。
血管の形成異常による病気であり、厳密には腫瘍ではありません。ただし、自然に消失することは少なく、発生した場所や大きさによっては治療が必要になります。
主な症状
静脈奇形の症状は、病変の大きさや発生する場所によって異なります。
皮膚の浅い部分にできた場合には、青色のあざや柔らかいふくらみとして認められることがあります。押すと小さくなり、力を抜くと再びふくらむことが特徴です。
代表的な症状には、以下のようなものがあります。
- 腫れや変形: 病変部分がふくらみ、顔や手足の形に左右差が生じることがあります。
- 痛み: 病変内に血液がたまり、小さな血栓(血液のかたまり)ができることで、痛みや圧痛が生じることがあります。
- 機能障害: 舌や口唇では食事や発音に、手足では関節の動きなどに影響することがあります。
- 出血: 表面に病変がある場合には、出血を繰り返すことがあります。
特に病変が大きい場合には、内部で血液が固まりやすくなり、血液の凝固機能に異常をきたすことがあります。そのため、必要に応じて血液検査を行うこともあります。
診断について
静脈奇形は、外観や症状などの診察に加えて、画像検査を行うことで診断します。
超音波検査(エコー)では、病変の内部構造や血液の流れを確認します。また、CTやMRI検査は、病変の大きさや周囲への広がり、筋肉などの深い組織との位置関係を調べるために有用です。
必要に応じて血液検査を追加し、病変の性質や治療方法について検討します。
治療について
静脈奇形の治療は、病変の大きさや発生部位、痛みなどの症状、日常生活への影響を考慮して決定します。
すべての静脈奇形に治療が必要なわけではありません。症状が軽く、日常生活への支障が少ない場合には、原則経過観察をします。
治療が必要な場合には、主に以下のような方法があります。
1.保存的治療(圧迫療法・薬物療法)
手足などの静脈奇形では、弾性包帯や弾性ストッキングなどを用いて患部を適度に圧迫することで、腫れや痛みを軽減できる場合があります。
また、痛みがある場合には鎮痛薬などを使用します。病変内に血栓ができやすい患者さんや、血液の凝固異常を伴う患者さんでは、状態に応じて血液を固まりにくくする薬剤を使用することもあります。また一部の漢方薬には疼痛の頻度を改善させる効果があるとされています。
2.硬化療法・凍結療法(主に放射線科、市内関連施設が担当)
超音波やX線などの画像で確認しながら病変内に細い針を刺し、硬化剤と呼ばれる薬剤を注入します。これにより、異常な静脈の内側に作用して血管を閉塞させ、病変を縮小させます。
手術で切除することが難しい病変にも適応となる場合があり、症状の改善や病変の縮小が期待できます。
ただし、病変の大きさや広がりによっては、複数回の治療が必要になることがあります。また、治療後に一時的な腫れや痛みが生じるほか、まれに皮膚や神経など周囲の組織に障害が生じる可能性があります。
凍結療法も効果療法に類似して、針を用いた治療ですが、針先から一定の範囲を凍結して治療するという特徴から、硬化剤が流れにくい病変や、より小範囲に限局した病変を対象にしています。
2026年の診療報酬改定により、凍結療法および硬化療法の一部薬剤については保険適応となりました。
3.外科的切除(主に形成外科が担当)
病変が限局していて、安全に切除できる場合には、手術によって病変を取り除くことを検討します。
特に、外見上の変形が目立つ場合や、痛み・出血・機能障害などがある場合には、有効な治療方法となります。
一方、静脈奇形は正常な筋肉や神経などの組織に入り込むように広がっていることもあり、すべてを切除することが難しい場合もあります。
そのため、周囲の正常な組織や機能をできるだけ温存しながら、症状の改善を目指して治療を行います。
4.その他の治療
広範囲に及ぶ難治性の静脈奇形では、専門的な評価のもとで新しい薬物療法が検討されることもあります。
これらの治療法は単独で行うだけでなく、硬化療法と手術を組み合わせるなど、患者さんの状態に応じた治療計画を立てることが重要です。
参考資料
本文は、国内の診療ガイドラインを参考にしています。
- 血管腫・脈管奇形・血管奇形・リンパ管奇形・リンパ管腫症診療ガイドライン2022
(2025年11月に第3.3版公開)
※掲載内容は更新時点の情報であり、現在の診療内容等と異なる場合があります。
あらかじめご了承ください。
